感染拡大防止のため、外での飲酒が難しくなり、私は家飲みが増えました。
私は家でビールを飲むとすぐに酔っぱらってしまいますが、泡盛なら酔わないことがわかり、よく飲むようになりました。
なんとなく選んだ泡盛を飲むのではなく、泡盛を知って飲みたいと思ったので、桜坂市民大学の「泡盛講座」を受講することにしました。
若干、黒歴史的になりましたけれど、泡盛について学べました。
泡盛講座の写真は撮れなかったので、参考写真と一緒に紹介します。
桜坂市民大学とは
映画を上映している桜坂劇場には、桜坂市民大学と言うカルチャースクールがあるんです。
この階段を昇ると桜坂市民大学です。
講座の内容は、沖縄に関するものや語学、ダンスなど様々で、長期的に学ぶものから、1回だけの講座もあります。
桜坂ファンクラブに加盟している私は定期的に送付される冊子で講座を知り、申し込みました。
1回目:琉球泡盛とは
毎回90分の講座で、最初の1時間くらいは座って講義を聞きます。
教えていただいたことを、ざっくりとまとめてみました。
お酒の定義
日本の酒税法の定義では「酒とはアルコール1%以上の飲料を言う」。
料理酒は飲めないように加工されているので、お酒ではありません。
みりんはアルコールを加えているので、お酒です。
子供におつかいを頼むと、みりん風調味料は買えても、みりんは買えないことになります。
お酒は造り方の違いで大きく3つに分けられます。
醸造酒:穀物や果実を原料として発酵させたお酒:日本酒、ビール、ワイン
蒸留酒:米、麦などの穀類、果実などを原料として発酵させ、さらに蒸留したお酒:泡盛、焼酎、ウィスキー、ブランデーなど。
混成酒:醸造酒や蒸留酒に草根木皮や果実などの香味を移したもの:梅酒、ハブ酒、リキュールなど
泡盛の定義
琉球泡盛の定義
古酒(くーす)の定義
泡盛の語源
泡盛の語源ははっきりしておらず、4つの説があります。
- 作る時、注ぐ時に泡が立つから。/蒸留の際、泡が盛り上がるから。
- 昔は原料に米ではなく、粟を使っていたから。
- 梵語の酒を意味する”アワムリ”が変化したもの。
- 薩摩藩が焼酎と区別するために名を付けたから。
泡盛の歴史
琉球王朝時代に泡盛は作られていました。
琉球は中国と冊封関係にありました。冊封使(さっぽうし)は、中国の皇帝の使者で、今風に言うと超VIPです。冊封使は400人~600人ほどで、風向きが変わらないと船で帰れなかったので、半年ほど沖縄に滞在しました。大量のお酒が必要でした。そのため、製造や販売には厳しく管理されていました。
あのペリーも来沖した際に、泡盛を飲んだと言われています。
戦後、酒造所の乱立、乱売で質が低下してしまった時期もありましたが、1972年に沖縄国税事務所が開設され、2013年には公正競争規約が改正されました。
現在では、泡盛文化の発展に向けた新たな動きもみられるようになりました。
1回目の泡盛テイスティング
実際に泡盛をテイスティングして、それぞれの泡盛の違いを感じます。
違うとはわかっても、上手く表現できないこともあります。
フレーバーホイールを参考にして、違いを知って、よりおいしく飲むのが目的です。
この日にテイスティングさせていただいた泡盛は
- 新里酒造/琉球
- 瑞穂/瑞穂
- 新里酒造/六代目
でした。
私が感じたことを書いておきます。もちろん、人によって感じ方は様々でどれも正解だそうです。
1.新里酒造/琉球
ほのかな華やかさのある香りで、バニラのような甘みとコクが感じられて飲みやすいです。
2.瑞穂/瑞穂
琉球に比べて甘くなく、ちょっと香ばしさも感じられます。ドライな印象がありました。割って飲むとまた違った印象になりそうです。
3.新里酒造/六代目
六代目の方が作ったので六代目という名前になっています。
古酒なので、落ち着いた香りが長く続きます。まろやかさ、角の取れた熟成感があります。丁寧に熟成させたのだろうなと年月の織りを感じました。
2回目:泡盛の原料と製造工程
2回目は泡盛の原料と製造工程についての講座でした。教えていただいたことをざっくりまとめます。
アルコールは、ブドウ糖に酵母を加え発酵させることで生成されます。泡盛の原料である米はデンプンです。麴を入れないとブドウ糖になりません。
泡盛の製造工程は
原料米に黒麹を入れ、酵母を加え、蒸留、ろ過して泡盛を作ります。
果物は自然にブドウ糖を持っているので、ワインは麹を入れなくてもアルコールになるのです。
泡盛の主な原料は、米、水、麹、酵母です。
米:日本人がご飯として食べるのに好まれるのはジャポニカ種ですが、泡盛にはタイ米・インディカ種が適しているとされる。
タイ米ではなく、伊平屋島産のお米で作った楽風舞(らくふうまい)という泡盛もあります。
お米の味がしておいしいです。
水:泡盛づくりには硬水が良いとされる。沖縄本島の地層によって硬度が異なり、水によって味わいも変わる。
麹:麹とは、穀物にカビを中心とした微生物を繁殖させたもので、泡盛には黒麹菌が用いられる。デンプンを糖分に分解する働きをする。
黒麴菌は沖縄固有の麹なので、学名に琉球と入っています。
酵母:糖からアルコールを生成する働きをする。酵母は様々な種類があり、香りや味わいに関わる成分を造りだす。
蒸留方法は、常圧蒸留と減圧蒸留があります。
常圧蒸留:伝統的で一般的な蒸留方法。重厚で、どっしりした酒質、古酒に向く。
減圧蒸留:新しい蒸留方法。淡麗でフルーティな味わい。古酒に向かない。
2回目の泡盛テイスティング
2回目の泡盛テイスティングは次の4つでした。
- 比嘉酒造/残波
- 比嘉酒造/残波ホワイト
- 瑞穂酒造/Ender(エンダー)
- 神村酒造/芳醇浪漫 守禮
私の思った感想を書いておきます。
- 比嘉酒造/残波
常圧蒸留。こちらは新酒のつもりで提供していただいたのですが、詰め日が2017年だったので、びんの中で熟成していました。詰め日が最近のものと飲み比べてみましたが、全く異なった味わいで笑ってしまいました。
華やかさのある香りが時間が経つとヨーグルトっぽい酸味も感じられます。2番と比べると、どしっとしています。
2.比嘉酒造/残波ホワイト
減圧蒸留。トウモロコシのような穀物の香りがします。優しい味なので、ストレートで飲めます。
3.瑞穂酒造/Ender(エンダー)
減圧蒸留。エンダーとは、沖縄の言葉で優しいの意味です。軽い日本酒のような味わいなので、泡盛を飲んだことのない方に、入門編として紹介できそうな感じがします。
4.神村酒造/芳醇浪漫 守禮
常圧蒸留。カラメル香がします。甘みというより、ビターチョコレートのような香りがします。古酒ではありませんが、芳醇な味わいと余韻があるので、じっくりと飲みたいお酒です。
3回目:一般酒と古酒
泡盛講座3回目は一般酒と古酒についてでした。教えていただいたことを、ざっくりまとめます。
泡盛は一般酒と古酒にわけることが出来ます。
一般酒:新酒とも呼ばれる。製造から3年未満、若い味と風味。
古酒:クースと呼ばれ、製造から3年以上のもの、甘く芳醇な香りとまろやかな舌触り。
熟成するとは
泡盛が空気との接触により香味成分を変化させ、刺激的な香味がなくなり、芳香を増す。
アルコールと水が組み合わさり、味が丸くなる。
熟成(古酒化)は、ビンでも進みます。
カメに泡盛を入れて、飲んだり、蒸散した分を継ぎ足して補充する方法を仕次(しつぎ)と言います。
カメで仕次をすると子や孫の代まで飲みながら古酒を育てることが出来ますが、マメに世話をする必要があります。
3回目の泡盛テイスティング
3回目の泡盛テイスティングは次の5つでした。
- 八重泉/八重泉酒造 一般酒
- 八重泉/八重泉酒造 古酒
- 古酒龍泉/龍泉
- 春雨/宮里酒造 古酒
- 忠孝/忠孝酒造 古酒にしたもの
- 八重泉/八重泉酒造 一般酒
爽やかでナッツのような香り。シャープさもあるので、食事しながら飲むのに良さそう。
2.八重泉/八重泉酒造 古酒
キノコのような香り。重厚で骨太な感じもあるが角が取れている。後味がすっきりしていて、食後にじっくり飲みたい。
3.古酒龍泉/龍泉
辛口でスパイシー。今まで飲んだ泡盛とも全く異なる味で、ちょっと苦手でした。
4.春雨/宮里酒造 古酒
華やかさがあり、穀物っぽい感じ。だんだん甘くなっていきました。
5.忠孝/忠孝酒造 古酒にしたもの
講師の方が古酒に育てたものです。ドライフルーツのような甘みとしっとり感があり、古酒らしさが味わえました。
4回目:泡盛と食文化
4回目は泡盛と食文化、泡盛と料理のマリアージュがテーマでした。教えていただいたことをざっくりまとめます。
琉球料理は宮廷料理と庶民料理に分けられます。
宮廷料理:特権階級のみが食べられたもの。冊封使(さっぽうし)や薩摩役人の接待のため発達しました。
庶民料理:一般庶民が食べるもの。
明治以降、一般家庭へ広がっていきます。
沖縄食材の特徴
- 豊富な魚介類:魚だけでなく、貝や海草も豊富。
- 多様な汁物:栄養素をあますことなく摂れる理にかなった調理法。
- 豊富な野菜、薬草:沖縄の野菜や薬草はミネラルが豊富。
- 豚肉、豆腐、昆布を多用:沖縄で昆布は採れない。北海道から北前船で伝わる。
冊封使は1回に豚を5,000匹、泡盛を2万本飲んだなんて記録もあるそうです。そりゃ、いろんなものが発展するワケです。
泡盛と料理の組み合わせは
- 似た味わい・香りの相乗効果
- 反対の味わい・香りの対比効果
クラフトビールと料理の組み合わせでも、同じように聞きました。いろいろ試してみるのが良さそうですね。
4回目の泡盛テイスティング
4回目は、おつまみと一緒に泡盛をテイスティングさせていただきました。
- 神泉/上原酒造 一般酒
- 神泉/上原酒造 古酒
- SHIRAYURI INUI/池原酒造
- 暖流3年古酒/神村酒造
- 久米島の久米仙/久米島の久米仙
私の感じた感想を書いておきます。
- 神泉/上原酒造 一般酒
バニラのような香り。どっしりしているが後味がシャープでおいしいです。
2.神泉/上原酒造 古酒
パンチがあり、骨太感がある。濃いめの料理と合わせると良さそうです。
3.SHIRAYURI INUI/池原酒造
クセがあります。ゆっくり、じっくり飲んでみたいです。
4.暖流3年古酒/神村酒造
黒糖のようでスモーキーさもあり、ウイスキーのような印象もあります。
5.久米島の久米仙/久米島の久米仙
泡盛の定番のような久米仙ですが、古酒になっているので、レーズンのようなドライフルーツっぽさも感じられます。
5回目:「ようざん窯」見学
泡盛講座の5回目は特別講座として、八重瀬町にある酒カメの窯元「ようざん窯」を見学させていただきました。
ようざん窯の垣花さんは、古酒に魅せられ、酒カメを追求するあまり、窯まで作って酒カメを作っている方です。
耐火煉瓦を4,000個ほど使って作ったこの窯も自作です。6回作り直して現在の姿になっています。
やちむんは、釉薬(うわぐすり)を使わない荒焼(アラヤチ)と釉薬を使って食器などを作る上焼(ジョーヤチ)にわけることが出来ます。
ようざん窯では、釉薬を使わない荒焼で、主に酒カメを作っています。
酒カメなので、漏れないことが重要になります。そのため、焼しめる必要があり、高温で焼く必要がありますが、一気に温度を上げても下げても割れてしまうのです。
ようざん窯は1週間かけて焼き、10日ほどかけて冷ましてから取り出します。焼きが甘い時には二度焼することもあるそうです。
県外では薪に松の木を使うことが多いのですが、沖縄では入手できず、今は建築廃材などを使っているそうです。
釉薬は使っていませんが、灰が溶けて自然の釉薬になり、ツヤが生まれます。
窯に入れた後は酒カメを触ることも出来ないので、取り出すまでどんな作品になっているかわからないのだそうです。
垣花さんは、焼き物を学んだわけでも弟子入りしたわけでもないそうです。自由な発想と沖縄の土や空気、炎で酒カメを作り上げているのでしょうね。
垣花さんは頭でっかちはいけないと言われました。私はつい、元茶道クラブだったとか、壺屋やちむん通りによく行くとか言いたくなってしまうので、反省しました。
山に抱かれたとても気持ちのいいところだったので、またお邪魔したいなと思いました。